INDEPENDENT LIGHT Vol.6 NAGOYA AICHI

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写真を媒介とした作家による投影スライドショーイベント“INDEPENDENT LIGHT”は2013年5月東京新宿での公演を皮切りに全国各地で開催してきました。あらゆる技術が刷新される現代において、写真の出力メディアは紙だ けに留まらず、写真から生まれるイメージはあらゆる支持体に接続し、その柔軟な憑依性を見せています。写真がどこにでも出現可能なものであるならば、それ が世界のあらゆる場所で立ち現れ、見る人を魅了する可変的な窓や扉として存在することもまたひとつの理想として提示したいと考えます。この度は、地理的に日本の中心地であり独自の文化を形成してきた愛知県名古屋市でイベントを開催致します。2005年の国際博覧会や、昨年開催された「あ いちトリエンナーレ」などの影響を受けながら、土地は微かに賑わいを見せ始めていました。長者町では若いアーティストたちが小さなシェアアトリエを運営し 始め、県内の美術館では貴重な展覧会が次々と開催されています。

とりわけ愛知県美術館で8月から9月にかけて開催される現代写真の企画展「これからの写真」は今後のフォトシーンを思考するための重要な資料となるでしょ う。その展覧会趣旨冒頭で述べられている「写真を巡る環境の急激な変化から生じる特定の技術としての写真の輪郭の消失」とはいかなる状況でしょうか?撮影 やプリント技術によって支えられてきたいわゆる、「写真術」の正当なあり方が崩壊しつつあり、デジタル技術の革新から生まれた誰もが美しい画を撮ることの できるデジカメの登場によって写真術は寄る辺のない淵をさまようほかなくなったとも言えます。

それでは、これからの写真が拠り所とするものは一体何なのでしょうか?
INDEPENDENT LIGHTはその状況に対し一石を投じるためプロジェクション(=投影)という形態を提案します。
こ れまで紙というマテリアルに支えられてきた写真が、どのように姿を変え未来に残されていくのか想像してください。機械を使う表現であるからこそ技術革新の 波に飲まれ、常に希望と不安の合間を行き来することを覚悟しなければなりません。その状況を乗り越えていく作業するのは他でもない写真というメディアを扱 う作家です。

本イベントにて上映していただく5名の作家はそれぞれ異なった観点から写真の可能性を考え、制作を行っています。

伊丹豪は長いキャリアの中で作品を変化させてきましたが、近作では写真を写真足らしめる条件を、他の平面イメージと接近させることで検証し、写真の根本的な生まれや写真からある要素を奪うことで写真とグラフィックの臨界点を探っています。
詫間のり子はWebスライドなどの媒体で多くの写真を組み替え独特のシークエンスを追求しながら、写真のもつ断片性を時間軸の中に表出させます。初期作品「まばたき」から調子や速度は変われどもその制作スタイルは一貫していると言えるでしょう。
山内亮二はグローバリゼーションがもたらした均質的な都市像の背後に潜む文化の多様性に興味を抱き、アジアのグローバル都市を中心に巡っている。都市を人が生きてきた痕跡として写し取り、考古学者のように変化しつづける都市の新たな一面を探っています。
矢島陽介の抜殻のように脱力した人物写真は、写真に写った彼らの性格や感情を読み取らせず、鑑賞者の思考は行き場を失い不安の渦に飲まれます。それはいかに見る者の意識によって人のイメージが成立しているかを逆説的に暗示しています。
河合智子は現代社会の中にある曖昧さに焦点をあてた作品を制作しています。写真に写らない背景に焦点をおき、どう写真化するか、撮る行為自体は探求でありメディアの一部としての写真意義も含め、今後も変化していく写真の可能性を見つめていきたいと述べています。

このように五名の作家がそれぞれの視野を持ちながら、写真のあり方を追求しています。
キュレーションを介さないアーティストイニシアチブによる5者5様の作品スライドショーが東西の文化が流れ込む名古屋という土地でどう見られるのか今から楽しみでなりません。ぜひ、この機会に御高覧ください。

この夏、名古屋は最も重要な写真都市となります。

“INDEPENDENT LIGHT” 事務局

— Artist Profile —
■伊丹豪 Go ITAMI
1976年 徳島県生まれ。
国内外からの注目も高く展示にも多数参加。グループ展に、「TOKYO 2020」(2013年)などがある。
2013年、VACANT(東京)ほか全国5カ所を巡回した個展「sktnkyshi」を開催し、写真集『Study 』(RONRADE)の刊行に合わせて個展「Study」をMotto Berlin(ドイツ), POST/limart(東京)で開催した。URL:http://www.goitami.jp/
■河合智子 Tomoko KAWAI
2001年 Academy of Art University in San Francisco, New Media学科卒業。
[東 京画-Describing Tokyo Scapes by 100 photographers]参加作家、第3回TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 準グランプリ受賞、Fotobookfestival Kassel Dummy Award (ドイツ)入賞。URL:http://tomokokawai.net/■詫間のり子 Noriko TAKUMA
大阪生まれ。「その時にそこにいたことがゆるがない。戻らない。」2007 キヤノン写真新世紀準グランプリ
2011 ・プリマヴェーラ賞受賞ニューヨーク研修個展
2007 まばたき(ギャラリー射手座/京都)
2008 麒麟と眼を瞑る(florist gallery N/名古屋)
2009 行方知れず(ギャラリーマロニエ/京都)
sink or swim(florist gallery N/名古屋)
2011 遠くの話(florist gallery N/名古屋)
太陽とパーツ(CAP STUDIO Y3/兵庫)
2013 cheap chic(florist gallery N/名古屋)■矢島陽介 Yosuke YAJIMA
1981年生まれ。2007年エスクァイアデジタルフォトアワード審査員賞(やなぎみわ選)。2009年 第1回写真1_WALL入賞。
2013年トーキョーフロントラインフォトアワード審査員賞(後藤繁雄選)。
主な個展に「PORTRAIT」(2013/ギャラリー916small)、「A place in the cliff」(2011/TAPギャラリー)。
主なグループ展に「SPACE CADET Actual Exhibition」(2012,13/ターナーギャラリー)、「THE EXPOSED #6」(2011/表参道ヒルズ)など。
昨年度はKassel Fotobook Festival Dummy Award(カッセル/ドイツ)、Unseen Dummy Award(アムステルダム/オランダ)にてそれぞれ入賞するなど、活動の場を広げている。■山内亮二 Ryoji YAMAUCHI
1986年岐阜県生まれ。2011年名古屋学芸大学大学院メディア造形研究科修士課程修了。コニカミノルタフォトプレミオ2013入賞

写真作家として愛知県を拠点に活動中。グローバリゼーションがもたらした均質的な都市像の背後に潜む文化の多様性に興味を抱き、アジアのグローバル都市を 中心に巡っている。都市を人が生きてきた痕跡として写し取り、考古学者のように変化しつづける都市の新たな一面を探っている。

URL:http://www.ryojiyamauchi.com

— Information —

INDEPENDENT LIGHT Vol.6  NAGOYA/AICHI

日時:2014年9月6日(土) 18:00 start / 21:00 close
場所:C7C
上映作家:伊丹豪 / 河合智子 / 詫間のり子 / 矢島陽介 / 山内亮二
モデレーター:C7C 伊藤嘉久
進行:INDEPENDENT LIGHT 事務局